園長月のお便り
  • 天使
    ご大切に
                      園長 玉井 史恵

     私がマリア幼稚園に就職した当時、
    神様は厳しい方という教えでした。
    悪いことをすれば神様に叱られる。
    良いことをすれば神様に褒められる。
    と子どもたちにも伝えていました。
    「誰も見ていなくても神様がみているから、
    悪いことはしないで。」という感じでしたので、
    私にとっての神様は、良い悪いの裁き手のような方でした。
    しかしその後、前々園長の秋元神父様をはじめ、
    多くの神父様が教えてくださった神様は違いました。
    神様は『アッバ』おとうちゃん(親愛なる情を込めて)だと
    教えてくださいました。
    おとうちゃんですから、遠くにいる方ではなく、
    私たちを見張っている方でもなく、
    いつも私たちのそばで見守ってくださる方であると。
    そして私たちが間違ったことをしてしまった時は、
    叱るのではなく悲しむ方なのだと教わりました。
    その神様の子として、イエス様はお生まれになりました。
    そしてイエス様は世界中の人々に愛することの
    大切さを教えてくださいました。
     キリスト教が日本に入ってきたとき、
    日本人は「愛する」という言葉の意味を正しく受け入れる
    ことができなかったため、『ご大切』 
    という言葉に言いかえて伝えられていたのだそうです。
    マリア学園の教育理念は 
      『わたしがあなたがたを愛したように、
        あなたがたも互いに愛し合いなさい』
         (聖書に書かれているイエス様の言葉)ですが、
    それは 
      『私があなたたちを大切にしたように、
          あなたがたも互いをご大切にしあいなさい』
    という言葉になります。
    愛しなさいと言われるより、
    ご大切にしなさいと言われたほうが、今の私にもハードルが下がって、
    できそうな感じがしてきます。皆様はどうですか?   
     しばらく前に年中の女の子が
    一人で御聖堂の椅子に座っていました。
    どんなお祈りをしにきたのだろうと、
    私はその子からは見えないところでそっと耳を傾けていると、
    「神様、今日はお友達と仲良く遊びました。ありがとう…」
    と祈りはじめました。
     そのあとも少し祈りは続いていたのですが、
    小さな声でしたので残念ながら聞こえませんでした。
    でもその祈りを聞いたとき、小さなロウソクの火がともったように、
    心の中がじんわりと温かくなりました。
    その姿を思い出すだけで、今も幸せな気持ちになります。
    今年もクリスマスが近づいてきました。
    毎年この時期になると、子どもたちにイエス様をお迎えするために
    心のプレゼントをためましょう。と話しをしながら、
    私も何かよいことをしなくては!と、
    急いで良い人になろうと努力をはじめていましたが、
    手っ取り早くする良いことなどたかが知れています。
    この女の子のように、誰かに見てもらうためではなく、
    褒められるためでもなく、自慢するためでもなく、
    そっと神様だけに祈った、そんな素直な心が愛の心なのだろう。
    と気づかせてもらった気がします。
    私もそんなふうに、周りの人に気づかれないくらいに
    そっと人を大切にしながら、クリスマスを迎える心の準備をしていきたい。
    と思わせてくれた出来事でした。
    ここに書いている時点で「そっとではないね…」
    と神様は笑っておられるかもしれませんが…。
     世界中の人々が、
    互いをご大切にし合いながら、
    温かい気持ちでクリスマスを迎えられますように…。

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