園長月のお便り
  • 『聖家族』                          園長  湯本 美奈子
     早いもので、あとひと月余りで1年が終わってしまいます。早いものですね。        22日はクリスマス会です。インフルエンザや胃腸炎などが広がらず、
    無事に揃って当日を迎えることができるよう、健康管理はもちろん精神面でも
    子どもたちを温かく見守り、応援しながら過ごして下さい。
     さて、クリスマスのすぐ後の日曜日(30日)は『聖家族』
    (ヨゼフ・マリア・イエス)の祝日です。クリスマスは毎年世界中でお祝いしますが、
    その後はすぐ大晦日…。日本人は慌ただしく過ごしてしまいますね。
    そこで少し考えてみましょう。ヨゼフとマリアの新生活は、凡人の基準や
    価値観で考えれば、幸せとは程遠い想像を絶する不安や苦難の連続でした。
    ヨゼフは自分の子でもない聖霊によって身ごもったマリアを連れて旅に出なければならず、
    宿屋は満員で、火の気のない粗末な馬小屋で出産を迎えました。
    休む間もなく主の使いがヨゼフの夢に現れ、
    「起きよ、幼子と母を連れてエジプトに逃げよ」と告げます。
    マリアも、床(とこ)上げまで安静にとか、産後の肥立ちどころの騒ぎではありません。
    東の博士たちの来訪によって、真の王の誕生を知ったヘロデ王がベツレヘムと
    その地方全体にいる2歳以下の男の子をことごとく殺すよう命令を出したからです。
    又また長い旅を強いられました。赤子を連れて、どれほど大変な旅だったことでしょう。
    けれども神さまは、どんな苦難にも、必ず道を示して下さいました。
    そして何よりヨゼフもマリアも神を信じる『祈りの人』でしたから、
    常に従順で、感謝に満ち溢れながら家族寄り添って生活していたのでしょう。
     ミサの説教で神父様が自分の4~5歳頃の話をして下さいました。
    積み木に熱中して遊んでいた時、友だちが外で遊ぼうと誘いに来たので
    外に飛び出して行こうとした瞬間、お母さんが積み木を片づけてから行くよう声を掛けます。
    けれど神父様は「帰ったら片づける!」と言って聞きません。
    お母さんは「それなら積み木はストーブで焚いてしまうよ」と言うのですが、
    どうせ焚くはずがないとたかをくくって、遊びに出てしまいます。
    帰ってきて見ると、すっかり積み木は片付いて跡形もなく、
    石炭ストーブが勢いよく燃え盛るばかり。神父様が「積み木は?」と聞くと
    「あぁ、ストーブで燃やしちゃったわよ!」とひと言。
    まさか本当に焚くとは思っていなかった神父様は愕然とし、
    泣くことすらできずにストーブを見つめていました。
    その様子を見たお母さんは「本当に大切なら、神様にどうか許して下さい。
    積み木を返して下さいと祈ってみなさい。」と言いました。
    それから神父様は、毎日寝る前に布団の前で正座し「神さまどうか私を許して下さい。
    大切な積み木を返して下さい。」と何日も祈り続けたそうです。
    そしてついにある朝起きてみると、まだ火の付いていない石炭ストーブの上に
    きちんと箱に入った積み木が置いてあったそうです。
    神父様はその時の光景を『奇跡を目の当たりにした』と表現されていました。
    「司祭としては母のとった行動は間違っていると思う。
    祈りは必ず叶えられるものではないのだから。けれども私は、
    その時生れて初めて心から真剣に祈った。母のとった行動は、
    心からの祈りを教えるには正しかったと思う」と話されました。
     「神は神なりの思いで私たちに最善と思うものを、もたらす」と
    神父様がおっしゃるように、自分の願いとは違っても、
    神さまからの答えに気付く力を与えられるよう祈りましょう。
    聖家族がそうであるように、神父様がそうであったように、
    家族や親子のような身近な関係の中で、祈りは深く育っていきます。
    来年も聖家族に倣って信頼し合い、愛し合い、尊敬しあいながら
    沢山祈って過ごしましょう。
    クリスマスのやさしさカードを楽しみにしています。

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