園長月のお便り
  •  先日『博士ちゃん』というTV番組をつけていると、
    15歳の少年が出ていました。
    その少年は5歳の時に家族旅行で行った
    フィリピンの様子に衝撃を受け、
    その人たちを助ける人になりたいという思いをもったそうです。
    そしてその思いを実現するべく
    コツコツと自分にできることをやっているという
    内容が放送されていました。
    じっくり腰を据えて見ていたわけではないのですが、
    その少年の話を聞きながら、
    私が以前研修で行ったフィリピンのことを思い出しました。
    もう30年以上も前になるのですが、
    日本人の先生がフィリピンの現地幼稚園で働いていて、
    その園を神父様と共に幼稚園の職員が訪問したのです。
    首都のマニラでは子どもたちが信号で止まる車の窓を叩き、
    物売りをしてきます。
    でもガイドの方からは決して窓を開けないように言われました。
    買ってくれるとわかったら何十人もの子どもが群がってくるからと。
    何もできない自分に涙がこぼれました。
    また、ゴミ捨て場の山で、
    お金になりそうな物を拾っている子どもたちは皆裸足でした。
    子どもは働き手なので学校にも行かれないのだそうです。
    この私がみた光景とこの少年が見た光景は
    あまり変わっていないようでした。
     マニラからバスで10時間ほど行った村に
    日本人の先生は働いていました。
    そこの村人は、日本から行った私たちに
    今まで庭で走り回っていた鶏をさばいて“鳥がゆ” 
    を御馳走してくれました。
    鳥は卵を産む貴重な食料源、
    自分たちは鳥など食べられず
    日々の食事も満足に取れていないのに、
    見ず知らずの私たちのために
    その鳥を振舞ってくださったのです。
    申し訳なくて食べられないと断りましたが、
    好意を受けとらないのは逆に失礼だと現地の先生に教えられ、
    その鳥がゆ をいただきながら涙が止まりませんでした。
    生涯の中でこれ以上大きな愛の食事に出会うことはないでしょう。
     フィリピンでの様々な出会いの後、
    私たちにできることをしようと、
    マリア幼稚園の職員でお金を出し合い、
    フィリピンの子どもたちの里親制度に参加するようになり
    30年以上が経ちました。
    現在も2名の子どもの里親として支援を続けています。
    (その思いを受け継いでくれる先生方にも感謝です)
    誰かに支えられて大きくなった子どもたちが、
    また誰かを支える人に成長してくれることを願って…。
     博士ちゃんに出ていた少年にとっては、
    フィリピンで出会った人々が自分の隣人になり、
    フィリピンの村では、
    私たち日本からの訪問者が隣人として迎え入れられたのです。
    誰もが誰かの隣人です。
    隣人として受け入れられた喜びを感じ、
    受け入れた喜びを皆が持てるよになってくれることが、
    私たちの願いです。
    これからクリスマスに向かい、
    子どもたちと今まで以上に
    周囲の人に心を向けることを意識して過ごしていきます。
    私たち大人も誰かの隣人になれる喜びを
    一緒にわかちあいましょう。
    園長 玉井 史恵  

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