園長月のお便り
  • たくましく育てる                   園長  湯本 美奈子

     夏休みが終わり、いよいよ二学期が始まりました。
    お掃除大会も、お休み中にお手伝いいただき、有難うございました。
    気持ちのいい環境で過ごせることを心から感謝いたします。大人にとっても楽しいお休みでしたか?
    園が始まってほっとしていらっしゃる方のほうが多いかもしれません。
    街で久しぶりに会ったお母さんから、子どもたちが幼稚園を楽しみにしているという話を聞き、
    本当に嬉しく有難く思いました。二学期は長いですが、沢山の行事があります。
    有意義で楽しい経験を、たくさんさせてあげたいと願っています。
     休みが長かった分、リズムを取り戻すまで時間がかかる子もいます。
    ずいぶん昔になりますが、私の長女が入学して間もなく、突然学校に行きたくないと言い出しました。理由を聞いても訳が分からず、毎日泣きながら登校していました。
    私も新学期で忙しい時期でしたし、下の2人の弟妹も手のかかる年頃でしたから、
    言葉にできない不安や馴染めない様々な環境が、登校を渋らせたのだと思います。
    「早く」という言葉が口癖になっていました。私の責任です。
    それで朝、普段より早起きして自分のことを全て済ませ 、3人とゆっくり朝食をとった後、
    花いちもんめをしたり、ジャンケン遊びをしたり、鬼ごっこをしたりしながら通学路を歩きました。行ってらっしゃいと抱きしめて角を曲がるまで見守って、その後猛ダッシュで幼稚園へ。
    そんなことを続けるうちに、ある時「お母さん、明日からは自分で学校に行けるから大丈夫。」
    と言って来てくれました。本当に嬉しかったです。
    子どもは自分の気持ちに共感してくれたり、受け容れてもらっているという安心感を得れば、
    自分から乗り越える力を持っています。
     3番目の長男はかなりの問題児で、担任だった香代先生からは、毎日のように連絡帳で
    問題エピソードが返ってきました。その度に話して聞かせましたが、とうとう堪忍袋の緒が切れて、
    息子を帰りの車に乗せ、山奥のお墓に捨てに行きました。
    好き勝手に、一人で山奥で暮らせばいいと。今なら幼児虐待になり兼ねませんが、
    自分で我慢したり、けじめをつけたり協調することがどれだけ大切なことかを、
    体を張ってでも教えたかったのです。
    涙と汗でぐちゃぐちゃになりながら本気で向かってきた息子が、本当に愛おしかったです。
    このお盆に帰ってきた息子(教師をしています〈笑〉)と、それも
    『資質と能力について!?』のお題をもらい、夜中までいろいろな話をしました。
    あの問題児だった息子から、一人ひとりを大切に、個性を尊重する教育論を聞くようになったなんて、感無量でした。
     二学期は沢山の行事があり、その過程で様々なことを学び、乗り越え、成長する大切な時期です。
    けれども一人ひとりの体力も感受性も、乗り越えられるハードルの高さも違います。
    〝今″この子に最も必要なものは何かを考えて与えること。時には受容とやさしさであることも、
    厳しさと試練であることも両方大切です。対応の仕方は様々で正解はありませんが、
    そこに『愛』がある限り、子どもには、親の思いが必ず通じることを信じてください。
    子どもたちの言動には意味があります。共感し応援しながら見守る中で、
    日頃から低いハードルをちょこちょこ超える経験は子どもの生きる力と自信につながります。
    どうか子どもの力を信じて、とびきりの笑顔で送り出してあげてください。
    そしてハードルを自分の力で飛び越える事ができた喜びを感じられるような
    二学期にしていきましょう。

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