園長月のお便り
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    この間廊下を歩いていた時、
    私の顔をみるといつも静かに近寄ってきて
    自分の服を手渡す(手伝ってと無言のお願いをする)年少さん。
    この日は近づいても私に気が付かないほど
    真剣に自分の脱いだ遊び着を黙々と畳んでいました。
    しばらく見ていましたがそれでも気づかず
    袋を入れ終わるまで一人でやりきりました。
    ここまでくるのに約1年、
    ようやく自分の力でできる喜びを感じるまでに
    費やした努力は担任が一番知っていることでしょう。
    私の横には嬉しそうに見守る担任の姿がありました。
     友達とはいいけれど、大人と話すことがとても苦手で、
    遊んでいるときは話してくれるのに、
    面と向かうと何も言えず黙って目で訴え、
    私たちの声がげに涙目でうなずくことがやっとだった年長さん。
    この間初めて「お箸忘れたから貸してください」と
    私の目を見て言葉を交わしてくれました。
    この日まで恥ずかしいという気持ちと
    どれほど葛藤しながら過ごしてきたことでしょう。
    この一言に込められた思いや、努力を想像した時、
    胸があつくなりました。
     私に用があって(ブロックで作ったものを見せに)
    来てくれた年長さん。
    来客中だった様子を見て何も言わずに黙って部屋に帰り、
    時間が経ってから「もう入ってもいい?」と
    聞いてから職員室に入ってきました。
    状況を見て、今は園長先生だめなんだなと判断し、
    行動できるなんてすごいことです!
     また先日、延長保育に上がっていく時
    珍しく泣いていた年長の女の子。
    「どうしたの」と声をかけ手を広げると
    黙って私の膝の上に乗りしばし涙…。
    その姿を見た友達が近寄ってきて
    理由を聞くわけでもなく静かに「一緒に行こう」と
    手を差し伸べてくれました。
    泣いていた女の子はその手を取り
    一緒に階段をあがっていきました。
    言葉ではなく差し伸べられた手から、
    とても温かい心を感じたのは
    私もその女の子も同じだったことでしょう。
     このように日々の生活の中で
    嬉しいできごとに出会えた時の幸せな気持ちは、
    後で思い出しても心の中が温かくなります。
    そして一人ひとりの行動の裏にある気持ちを考えた時、
    お金で手に入れた物からは決して得ることのできない
    大きな幸せを感じます。 
    『見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ』 
    金子みすずさんは昼間の星は目に見えない。
    でもそこに存在している大切なものと詩にしています。
    『大切なものは目に見えない。かんじんなことは、
    心の目でみないとみえないんだよ』(星の王子さまより)
     目に見えて育った姿の中にある『お子さんの心』
    皆さんには見えていますか?
    これからも子どもたちの心の育ちを
    喜びあいながら一緒に過ごして参りましょう。
                         園長 玉井史恵      

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