園長月のお便り
  • 6月の第一土曜日に、岡谷にある聖母幼稚園で、

    長野県のカトリック幼稚園、保育園の先生方の

    研修会がありました。

    会場が私の母園ということで

    この研修会をとても楽しみにしていました。

    (父の転勤で幼稚園卒園までの3年間だけ岡谷に住んでいました。)

    50年以上ぶりに園の前に立ってみて、

    (園舎は新しくなっていましたが)

    『毎日母と一緒にこの道を歩いたこと』

    『通園途中にあったちいさな駄菓子屋さんを

    道端から覗くのが楽しみだったこと

    (買ってはもらえないんです)』

    『仲良しの友だちの家が園の隣にあったこと』

    『親子遠足の時、母がお産で動けなくて、

    近所のおばちゃんが一緒に行ってくれたこと』

    いろいろな思い出がよみがえってきました。

    どれも大した出来事ではありませんが、

    懐かしさとともに心がじんわりと

    幸せな気持ちに包まれました。

    幸せだった私がそこにいたからです。

    さて、皆さんは子どもの頃の幸せな

    記憶はありますか?皆さんのお子さんの中にも

    幸せの記憶が刻まれているでしょうか?

    以前こんなことがありました。

    幼稚園に来ることが嫌になってしまったお子さんが、

    1週間頑張って幼稚園に来たら何かご褒美をもらえるという

    約束をしました。

    1週間後約束通りご褒美をもらえることになりました。

    お母さんはとても張り切って、

    いつもは行かない少し遠くの

    楽しそうな公園に連れて行ってくれました。

    でもその子はそんなに喜ばなかったというのです。

    よく聞くと『家でお母さんとカルタをしたかった』

    のだとか。子どもの思いを知ることは簡単なようで、

    難しいこともあると教えられた出来事でした。

    でもそのお子さんはご褒美がなくても

    幼稚園に来られるようになりました。

    お母さんがその子のために何をしてあげようか考えて、

    一緒に遊んでくれたという愛を感じたからだと思います。

    同じようにご褒美をもらうという約束をしたお子さんがいました。

    その子のご褒美は物を買ってもらうことでした。

    1週目は頑張ってご褒美に好きな物を買ってもらいました。

    でもそのお子さんは、2週目はもう続きませんでした。

    物では子どもの心を満たせなかったということです。

    今の時代は物にあふれています。

    欲しいものは大抵我慢せずとも手に入ります。

    でも、ずっと我慢して手に入れたとか、

    沢山お手伝いして買ってもらったとかでない限り、

    物から得る喜びはその時だけのものだと思います。

    私たち大人もそうではありませんか。

    子どもたちの心の中に残るものは、

    やはり人との関わりの中で生まれるものだと思います。

    幸せの記憶は物では刻めないのだと思います。

    お仕事で忙しい方が多いと思いますが、

    今子ども達が求めていることに心を向け、

    お子さんのための時間を一緒に過ごしてあげてください。

    時間の長さではありません。

    1日の中で少しでもお子さんと向き合い、

    顔を見ながら会話をしていますか?

    小さなことでいいのです。

    この夏、ぜひ

    『ものより思い出』 の時間を過ごしてみましょう。

    園長 玉井史恵

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